研究概要 |
本研究では,特に以下の2点に着目し検討した. 1.ひび割れ注入補修された部材の曲げ破壊挙動の評価に関する解析的検討 ここでは,Rigid-Body-Spring Network(RBSN,剛体-ばねモデル)を用いて,(1)ひび割れ注入補修された部材の曲げ破壊挙動のメカニズムの解明,(2)数値解析におけるひび割れ注入補修のモデル化手法の確立,を目的とし解析的に検討した.ひび割れ進展を阻止する粗骨材の影響に着目した解析により以下の点が明らかとなった. (1)粗骨材をモデル化したインクルージョンにより,ひび割れが迂回する様子が再現でき,この挙動の違いが荷重-変形関係に影響を及ぼしていることが明らかとなった. 2.ひび割れ注入補修された鉄筋コンクリートはりの曲げ破壊挙動の評価 種類の異なる注入材を用いて補修を行なった鉄筋コンクリートはり(RCはり)の曲げ試験を行い,ひび割れ注入材の性能がひび割れ性状や部材の初期剛性の違い及ぼす影響について明らかにした. (1)寸法の小さな供試体(10×10×60cm)では,注入材の種類の違いがRCはりの曲げ破壊性状に大きく影響を及ぼした.引張強度の高い材料を用いた場合,注入部でひび割れは発生しないが,引張強度の低い材料を用いた場合には,低荷重レベルにて注入材にひび割れが生じる破壊性状を示した. (2)寸法の大きな供試体(30×10×180cm)では,小さな供試体にみられた注入材の違いに依存した破壊性状に影響は明確ではなかった.その理由は,初期ひび割れ導入時に生じた除荷あるいは破壊の局所化により閉口した微細なひび割れが補修後の部材にも存在し,低荷重レベルから開口し始めることによるものであることが明らかとなった.すなわち,実構造物レベルでひび割れ注入補修を行なう際には,これらの微細なひび割れを適切に発見する必要があることが分かった.
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