研究概要 |
近年,コンクリート構造物の早期劣化事例が増加し,社会問題と化している.なかでも塩害は劣化が激しく,早急に対策が求められているのが現状である. 一方,高流動コンクリートはその優れた変形,流動性能のために,狭窄部での打設が多くなる補修に対しての適用が極めて有効であると考えられる. そこで本研究では,塩害劣化構造物およびそれを高流動コンクリートで断面修復補修した場合を想定し,塩分を混入した普通コンクリートに,塩分を含まない普通コンクリートおよび2種類の高流動コンクリートを打ち継いだ供試体を作成した上で,供試体に塩分散布を行い,その鉄筋腐食性状について検討を行なった. その結果,以下のような結論が得られた. (1)塩分をコンクリート中に2.75kg/m3混入しても腐食減量はそれほど大きくないが,腐食面積率は大きくなる. (2)塩分含有コンクリートに高流動コンクリートを打ち継いだ場合,同一水結合材比の普通コンクリートを打ち継いだ場合と比較して,塩分を含まない部分の鉄筋のマクロセル腐食による劣化が遅延される. (3)塩分含有コンクリートに高流動コンクリートを打ち継いだ場合,同一水結合材比の普通コンクリートを打ち継いだ場合と比較して,塩分含有部の鉄筋のマクロセル腐食量が大きくなる. また今後の課題として,環境条件の影響を検討することがあげられる. さらに,本研究ではマクロセルのアノードとカソードの面積比と一定としたが,これも実際にはまちまちであり,また桁の湿潤状態等も環境条件によって異なるため,今後はそれらの影響も含めて検討を行なう必要があろう.
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