研究概要 |
石炭火力発電において発生するフライアッシュは,今後発生量の急激な増加が予測される。その有効利用として,現在フライアッシュセメントとして規定されているセメント置換率より,多量に置換したハイボリュームフライアッシュ(HVFA)セメントの実用化は,建設コスト低減の観点からも期待が大きい。本研究では,HVFAセメントモルタルの強度性状を把握することを目的に,より経済性と軽量化を追及する意味でのエアーミルクへの適用や,ペーストおよびモルタルの圧縮,曲げ強度性状を実験的に検討した。また地下構造物を対象とする場合は地下水の存在の有無により強度性状が異なることを想定し,エアーミルクについては,養生条件が強度性状に及ぼす影響についても検討した。 エアーミルクでは水粉対比,FA置換率,空気量を,HVFAペーストおよびモルタルについてはFA置換率と水粉対比を配合要因とした。供試体は,エアーミルクにおいては打設が容易なの円柱,ペーストおよびモルタルにおいては曲げ強度の測定,規定の突き固めを行うことが容易であることを考慮して角柱とした。円柱における圧縮強度試験はひずみ速度を約1mm/分に制御して行った。養生方法は,地下構造物の場合は地下水の存在を考慮して,水中および気中養生を行い比較した。 その結果,HVFAエアーミルクは水中養生により,空洞充填材として実用的な強度を得る場合,FA置換率を83%程度まで大きくできること,HVFAセメントにおいてはセメント水和物の生成も緩慢になるために,ポゾラン反応による長期強度の増進は期待できないこと,HVFAセメントにおいても,普通FAセメントの場合と同様に,圧縮強度に対する曲げ強度の割合では,普通コンクリートの場合より曲げ強度が卓越する傾向を示すこと,HVFAセメントの曲げ強度は,水粉対比を小さくすると強度の低下を招く場合があることなどが明らかになった。
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