木橋の現状を調査するうちに、ここでは数10年はメンテナンスフリーと言われた木橋が10年も経過しないうちに腐朽劣化するなど、耐久性や維持管理という問題が残されていることがわかった。このことから、3径間連続歩道木橋をモデルとして木材学的な手法による腐朽度診断、ならびに車両を載荷する構造的な手法による劣化度診断により健全度診断を行い、有意義な成果を得た。これに加えて全国の約50橋の現地調査を行い、以下のような問題点を見出すことができた。 ・高耐腐朽性を有すると言われる木材を利用する場合でも適切な維持管理は必要であり、木材を主構造に利用する以上メンテナンスフリーはあり得ない ・耐久性に劣るといわれる国産材を用いた木橋でも架設後10年を経ても健全なものはあり、また劣化も補修された例もある。スペックに頼ることなく適切な維持管理の姿勢を持つことが望まれる。 ・とはいえ、維持管理に関する事例が極めて少なく、問題が提起されてもそれに対する対処法が見いだせない。これに対しては当初試行的であっても積極的な対処とその情報蓄積が重要であることが認識される。 ・管理者側の姿勢として維持管理が後手に回っている例が数多く見受けられた。木材の特性上早期の対処であれば致命的な損傷はくい止めることができ、また木造住宅の改築を見れば明らかなように補修の容易な構造でもある。管理者に対する啓蒙が必要である。 以上のような維持管理の難しさは木橋だけの問題ではないが、黎明期にあり、また場合によっては部材の劣化が著しい木橋においては至急に解明されるべき課題であることが認識された。
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