これまでの研究では、ひずみセンサとして着目されている光ファイバをPC鋼より線に一体化させ、光ファイバで鋼材のひずみ管理ができることを直接引張試験で明らかにした。そこで本年度の研究では、光ファイバを一体化させたPC鋼より線をコンクリート用補強材としてコンクリート梁に適用し、コンクリート中に設置された状態で鋼材のひずみ管理ができるか、また鋼材に発生するひずみから曲げひび割れ幅や梁全体の変形を評価できるかコンクリート梁曲げ供試体(断面200×150mm、スパン長2300mm)を製作し、2点載荷曲げ試験(等モーメント区間1000mm)で検討した。なお、光ファイバによるコンクリート中の鋼材ひずみ測定結果の妥当性を評価するために、一般的には鋼材に貼りつけたストレインゲージでの測定結果と比較検討されるが、鋼材がより線タイプで、ゲージを取り付けるのが不可能であったことから、今回は、非線形汎用解析プログラム(ATENA)での解析結果と比較し、光ファイバによるひずみ計測が妥当であったか比較検討した。その結果、光ファイバで計測された各荷重段階における鋼材のひずみ分布と解析結果がほぼ一致することから、コンクリート中に設置された状態でも光ファイバが損傷を受けることなく鋼材ひずみを精度よく測定できることがわかった。また、光ファイバによって測定されたひずみから求まる増加応力とコンクリート梁の等-モーメント区間に発生する曲げひび割れ幅の関係は、土木学会コンクリート標準示方書設計編に記載されている曲げひび割れ幅算定式で評価できることがわかった。このことより、光ファイバで鋼材のひずみ管理を行えば、どの位置にどの程度の曲げひび割れが発生しているか管理できることの可能性が明らかになった。ただし、温度応力、乾燥収縮または環境外力によって発生するひびわれについては、今後検討する必要がある。
|