交通量や車両重量の増大に伴って、鋼橋の構造部材に疲労き裂が生じたという事例が数多く報告されている。この損傷数は年々増加する傾向にあるため、今後、膨大な数の鋼橋に疲労損傷が発生することが懸念される。したがって、疲労損傷に対して合理的な補修・補強を行うことは鋼橋の維持管理費を低減する上で重要である。本研究では、今後の鋼橋の維持管理費を低減することを目的として、実橋部材の疲労損傷度やその発生個所、余寿命を実働応力測定、疲労実験、疲労寿命解析および非破壊検査などに基づき定量的に評価する。また、点検周期、補修時期、経済的な補修・補強方法やその効果などを検討し、鋼橋の合理的な補修・補強方法を確立する。 本年度は、実橋における疲労き裂の形状・寸法の精度の高い測定方法、および各部材に生じる応力性状について明らかにするために、以下に示す検討を行った。 1.実橋における疲労き裂の形状・寸法の精度の高い測定方法の確立 検出が困難である溶接継手の内部欠陥を精度良く検出するための超音波探傷法を試験体で検討した。また、実橋でこの測定方法を用いた場合の検出精度についても検討した。その結果、十字すみ肉溶接継手のルートギャップを精度良く測定する方法を確立した。 2.各部材に生じる応力性状の把握 代表的な構造形式を有する鋼橋で応力測定を行い解析モデルの妥当性を検討した上で、鋼橋の一部分をモデル化し、その応力解析を行うことで、主部材と2次部材の接合部の応力を明らかにした。また、走行位置の違いによる応力性状の変化を明らかにした。
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