研究概要 |
塔状円柱構造物においては,渦励振の発生風速よりも数倍高い風速において"エンドセル励振"が発生する.この現象を指摘する研究者はいたものの,その励振源については未解明であった.この励振源を検出するために行った既往の風洞実験結果は,カルマン渦の放出周波数の約1/3程度の周波数を有する渦が円柱先端付近の後流域において発生することを示唆していた.また,この渦がエンドセル励振の励振源であることが解明され,"自由端渦"と名付けられている.本研究においては,自由端渦の空間的構造を調べるために可視化実験を行った.現象を緻密に観察するために,静止水中で円柱をゆっくりとした速度で牽引する方法を採用した.円柱表面からトレーサーを流出させ,円柱背後および上方からレーザースリットを照射して流れを可視化した.円柱の移動に追従するように設置されたビデオカメラを用いて可視化画像を撮影し,画像を分析した.その結果,円柱の中腹からはカルマン渦が周期的に放出されていたが,円柱先端近傍には流れ方向に軸をもつ縦渦が形成され,ちぎれて後方へ放出されることが観察された.これが自由端渦であると思われる.円柱先端に発生する縦渦にTrailing Vortexとよばれる渦があるが,これは放出されず,その場で旋回する性質を有するとされている.現段階においては,自由端渦の実体はTrailing Vortexがちぎれて後方へ放出されたものと推察している.
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