1995年兵庫県南部地震では、神戸港の混成式防波堤において最大2.5mを超える大きな沈下が発生した。これまでの現地調査及び実験的検討の結果、沈下の主メカニズムとして、応力状態が変相線に到達して後土の剛性が大きく減少する「揺れ込みせん断変形」が挙げられる。一方でレキ材盛土の振動実験結果によると、粗粒材が基礎地盤内に埋没し、盛土が大きく変状することが報告されている。本研究ではまず、通常重力場および30g遠心加速度場における模型振動実験を通して、基礎地盤の揺れ込みせん断変形やマウンド材埋没、すなわち物質移動による防波堤沈下のメカニズムや発達過程の観察、およびそれぞれのメカニズムの影響水準について検討した。通常重力場での振動実験の結果、以下の知見を得た:(1)防波堤本体の沈下は、直下地盤の過剰間隙水圧の急激な変動とともに進行し、加振終了とともに収束する。(2)マウンド直下浅部地盤においては残留間隙水圧が比較的小さな時点より変相が生じている。(3)上記より防波堤沈下の主たるメカニズムとして基礎地盤の「揺れ込みせん断変形」が挙げられる。(4)地盤材とマウンド材の粒径コントラストが大きい場合、振動載荷によりマウンド材が地盤中に埋没する「物質移動」が生じた。本実験結果によると、「物質移動」による沈下寄与分は防波堤天端沈下量に対し数10%に及んだ。次に、より実物に近い応力レベルにおける混成堤一地盤系の変状機構を観察するために30g遠心力場にて振動実験を実施した結果、前述の通常重力場実験で得られた知見が確認できた。特に遠心力場振動実験では、高速度CCDカメラで撮影した模型変形画像よりケーソン直下地盤のひずみの時間経過を読み取ったところ、振動載荷中に地盤水平伸張ひずみが進展・終息し、揺れ込みせん断変形による地盤の変形過程が確認できた。
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