研究概要 |
1995年兵庫県南部地震では、神戸港の混成式防波堤において最大2.6mに至る大きな沈下が発生した。本研究では、既往の現地水中音響学的調査や要素試験結果の再検討、および直下地盤内の初期応力解析より、防波堤の地震時沈下にかかわる主メカニズムとして,(1)直下地盤の非排水繰り返し揺れ込み変形、および、(2)マウンド粗粒材の基礎地盤内への埋没、に着目し、遠心力場震動実験によりこれらの発現過程および影響水準を調査した。その結果得られた知見をまとめると次のようである。(1)過剰間隙圧応答より防波堤中央直下地盤浅部では振動載荷中過剰間隙圧が負となるのに対し,下部では振動初期より急激な間隙圧上昇が計測された(ただし、いずれの深度でも液状化には至らない)。地盤およびマウンド内で計測した加速度記録より、地盤下部に比べ地盤上部では地盤剛性が保持されていると考えられる。また高速度CCDカメラ画像より、地盤ひずみは振動載荷中に発達し,地盤上層に比べ中層もしくは下層の方が大きく変形(鉛直方向に圧縮、水平方向に伸張)した。自重応力解析より直下地盤浅部において大きな初期せん断応力が作用する。一方、異方圧密状態からの非排水繰り返しねじりせん断試験結果によると、応力経路が変相線に到達後、軸ひずみ(初期の最大主応力方向である鉛直方向に圧縮、水平方向に伸張)が大きく発達するが、初期せん断応力比が大きい場合に変相時の残留有効拘束圧が小さく軸ひずみの進展も顕著となり、前述の地盤変形分布性状と合致する。(2)マウンド材と基礎地盤材料の粒径コントラストが大きい場合、マウンド巨粒材の基礎地盤中への埋没(物質移動)が生じる。本実験では埋没による沈下寄与分は巨粒材直径程度となった。
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