研究概要 |
本年度は,砕波を伴う風波界面下の乱流境界層の構造を記述するために,k-ε乱流モデルに基づく解析を行った.乱れの局所平衡の仮定とlog-wake則に基づいて,外層にも近似的に適用可能な,レイノルズ応力,乱れエネルギー,エネルギー散逸率,乱れエネルギーフラックス,渦動粘性係数の理論式を求めた.得られた理論式を慣性小領域に対応する低周波帯域の乱流特性量の実験値と比較した結果,これらは砕波を伴う風波下の乱流構造をうまく記述できることが確認された.また,表面更新理論に界面の伸縮速度(界面の発散効果)を取り入れて,新しいガス輸送係数式を導出した.界面の伸縮速度については,乱れエネルギーとエネルギー散逸率によって記述できることを示した.このガス輸送係数式を風波砕波界面へ適用する際に,界面での乱れエネルギーとエネルギー散逸率が必要となるが,これらは先に導出した乱流特性量の理論式を用いて評価できる.本研究で導出したガス輸送係数式では,界面の上昇流域で集中的に表面更新されることが仮定されているが,その妥当性を検証するために振動格子乱流水槽を用いて表面更新の可視化実験を行った.その結果,フレッシュな流体への更新は上昇流域において集中的に行われていることが確認された.海洋波界面の場合,このような表面更新が砕波による界面崩壊を通して大幅に促進するものと思われる.現在,表面更新ならびに気泡連行の定量的検討のために,精度の高い可視化実験が進行中である.さらに本研究では,微小酸素電極を用いることにより,塩水と真水の違いが酸素ガスの輸送に及ぼす影響についても検討した.ただし,その実験結果は既存の炭酸ガスの結果と異なっており,その正否を含めて今後さらに検討する必要がある.昨年度と今年度の研究結果より,砕波を伴う海洋波界面の乱流特性量とガス輸送係数の定量的評価がある程度の精度で可能であるものと考えられる.
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