本研究は、砕波形式が異なる場合での内部諸量(速度場・運動エネルギーなど)の時間・空間分布を比較することで、砕波変形のメカニズムを実験的に解明しようとするものである。ここで、流れの可視化手法(画像解析)は流速の空間分布が容易に得られるうえ、最近では、気泡混入後の解析例も報告され、波動場の内部特性を解明するうえで非常に有効な手法となっている。そこで、今回は一様斜面上での非砕波、崩れ波砕波、巻き波砕波を対象とした可視化実験及び画像解析を行い、砕波変形過程(水平床〜砕波点)での内部特性を調べるとともに空間波形との関係などについても検討を行った。本研究で得られた結論を要約すると以下のとおりである。 1)崩れ波砕波および巻き波砕波では、水平方向流速の最大値が入射位置での波速の0.4〜0.5倍程度で砕波する。これは砕波水深での波速を用いて換算すると流速波速比が0.5〜0.7で砕波することに相当し、片山・佐藤(1993)が示した砕波条件を支持する結果となる。 2)質量保存性を満足する画像解析手法により、崩れ波砕波に比較して巻き波砕波では、底面付近まで広域に渡って流体運動が存在することが定量的に明らかとなった。 3)砕波変形過程においても内部諸量は砕波形式により異なった分布特性を有し、特に、流速の鉛直分布特性により砕波形式の相違をよく表現しうることがわかった。 4)砕波形式によりその内部諸量は、空間的に異なった分布特性を有する。また、その要因の一つとして、波峰部に働くせん断応力分布の時間・空間変化特性の影響が考えられることを実験的に指摘した。
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