潜堤を用いた海浜保全工法は、従来の離岸堤に代わって多用されている。本研究期間中に実施した全国実施例アンケート調査(事業主体として県と国土交通省各事務所を対象)によれば、施工事例は100件程であり、海岸環境整備が主目的として使用されている。しかし、潜堤設置に伴い、その周辺には離岸堤には見られない局所洗掘現象も観測されている。この潜堤周辺の砂移動量を予測する上で、周辺の波浪や流れ、底面圧力の評価は非常に重要である。本研究は、SOLA法を用いて潜堤周辺の流れ場の数値計算を実施し、また、水理実験による波浪場、潜堤背後の底面圧力変動そして地形変化量を測定し、潜堤背後の洗掘位置や深さそして範囲等について検討したものである。まず、2次元N.S.式を数値計算し、全水深に対する底面圧力の大きさを算定した。次に水理実験により底面圧力変動を測定し、変動に高周波成分が見られず砕波による乱れは底面に達する前に分散されてしまう事、入射波の波動成分に対する底面圧力変動幅は10%程度であり、波形勾配が大きい程その値が小さくなる事等の結果を得た。次に地形変化量については、水路幅の1/2長さの潜堤を設置した所、潜堤端部背後で侵食、その岸側で堆積する地形変化が生じていた。入射波と最大侵食位置の関連を整理すると、最大侵食位置は、岸沖方向に0.08波長、沿岸方向に0.15波長の位置で発生する。最大堆積位置は、岸沖方向0.25波長、沿岸方向に0.04波長となる。また、最大堆積深さは、対波長比で0.02〜0.03、対波高比で0.6〜0.8との関係が得られた。地形変化の範囲については、入射波波形勾配が大きい程、侵食および堆積範囲とも狭くなる傾向が見られ地形変化を生じる範囲が集中的となっている。
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