本年度は、研究遂行のための水質資料の収集とモデルの改良作業を行った。 水質資料の収集では、徳島県白川谷森林試験流域(針葉樹林)における水質観測を継続して実施するとともに、徳島県脇町森林試験流域(広葉樹林)の水質観測を開始し、森林条件(主として植生の相違)が水質形成機構に与える影響を評価するための資料収集を行った。 モデルの改良では、これまで開発してきた物質流出タンクモデルを見直した。具体的には、これまで気温のみの関数であった硝化項を実際の土壌微生物が影響を受ける地温(地温モデルを構築し、気温から地温を推定できるようにした)と土壌水分量の関数としたことと、植生の栄養源としての吸収項をモデルに加えたことの2点である。今回のモデルの改良では、土壌水分量はタンクモデルの貯留水深を用い、植生による吸収量は蒸散量と関連づけた。これらのタンクモデルで計算された水分に関する諸量は、既に実森林流域における現象をうまく再現できることが分かっている。また、これらの諸量は森林特性を反映する。従って今回の改良によって、森林条件が水質形成機構に与える影響を評価しうるモデルに近づいたと考える。 実際に改良したモデルを用いて、1992年の白川谷森林試験流域における渓流水の硝酸態窒素濃度の季節変化を再現してみると、夏季、特に梅雨期における再現性が以前よりも良くなったことが分かった。来年度は現在収集している資料をモデルに適用して、森林条件がどのように水質形成機構に影響するのかを評価する予定である。
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