本年度は、昨年度に引き続き、徳島県横野谷流出試験地(徳島県脇町、広葉樹)における水質資料の収集とモデルの改良作業を行った。 まずこれまでに蓄積してきた徳島県白川谷森林試験流域(徳島県山城町、針葉樹)での観測結果を踏まえて、物質流出タンクモデルを汎用的かつ精度の高いモデルにするべく検討を行った。 具体的には、タンクモデルの流出孔の増設、溶存態物質と吸着態物質との溶質交換に関わるサブモデル、および硝酸態窒素の流出機構を表現するための消化サブモデルの改良を行った。改良の結果、白川谷に関しては、渓流水濃度観測値の経時変化の再現だけでなく、土壌内部における溶存物質濃度の経時変化の概要をも的確に再現することが出来るようになり、モデルとしての精度の向上を図ることができた。 一方、広葉樹が主な植生となっている徳島県横野谷流出試験地への物質流出ンクモデルの適用に関しては、平成12年度夏季の小雨や平成12年9月から平成13年1月にかけて流域内への砂防ダム設置工事の水質への影響などもあり、残念ながらモデルを適用するための十分な水質観測データを得ることができず、流域の水質特性に関しての定性的な評価を行うにとどまった。しかし、白川谷との比較を行った結果、横野谷の渓流水溶存物質濃度は全般的に高く、特に植物の必須栄養元素である硝酸態窒素やカリウムなどに関しては、白川谷の2倍から3倍であることが分かった。地質的には、両試験地はほぼ同じであることから、広葉樹と針葉樹との相違がこのような水質の違いとなって明瞭に現れるという貴重な知見を得ることができた。これらの成果は、土木学会等で発表する予定である。今後は、観測を継続すると共にモデルへの適用をできるだけ早期に行って今回得た知見を検証して定量的に評価する予定である。
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