2年間の当該研究の1年目においては、交付申請書に記載されている「大都市一極集中を抑え地方への分散とバランスのよい国土構造を形成するため、どのような開発計画を立案するか」という目的の基礎的なデータとして、対象国であるタイ・マレーシア両国の企業立地および開発動向のデータ収集につとめ、基本的な分析は詳細な部分に至るまで検討し、その成果を国別に日本語、英語で既に各学会、論文誌に掲載している。 主な知見としては、 1.企業立地については、タイ・マレーシア両国において歴史的文化的差異から基本的な性質に違いが見られるものの、グローバル化の影響が進行している近年の傾向としては、共に首都近郊に立地が促進される傾向がある。 2.バランスの取れた国土構造を形成する主体である政府政策に関しては、国土計画において文言的に、産業立地の地方分散を唱えているものの、実際の開発事業においては、タイの東部臨海開発計画、マレーシアのMSC(マルチメディアスーパーコリドー)に見られるように、首都を中心とした大都市圏(概ね車で2時間以内の距離)で行われる傾向があり、その他の各開発(工業団地、空港・港湾等基礎的インフラ)も、すべてとはいえないまでも大部分がそれらの地域で行われており、結果としてバランスの取れた国土構造を目指す政策にはなっていない。 といったところである。 1年目で現状認識に関する分析を終了したため、今後は、地域モデル構築を検討しつつ、今後の経済のグローバリゼーション、分業構造、規制緩和の波、などに応じた適切かつ柔軟な都市構造を提供できる枠組みづくりを目指す。折しも、タイ・万国への短期(3ヶ月)派遣がきまり、分析の検証、及び今後の政策の枠組みづくりについても信憑性の高い結果が期待できる。
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