本年度は以下の研究を行った。 1)建物の抽出について、特徴に基づく手法と領域拡張法による閉領域抽出法により建物抽出の実験を行い、抽出率の比較研究を行った。以下の結論を得た。 (1)特徴に基づく手法は0.5m以上の解像度の画像に対して相対的に有効であるが、1m-2m前後の解像度の画像から建物の抽出に関しては半分以下になるケースが多い。また、2m-3m画像の場合は、建物の抽出きわめて困難である(とても大きな建物を除く)。一方、領域拡張法は解像度にかかわらず、一定な抽出率が可能である。 (2)上述の両手法により建物を抽出する場合、建物抽出可能かどうかは解像度や建物のサイズと関係が深いだけではなく、建物の密度にも大きく依存する。また、領域拡張法は特徴に基づく手法より密度からの影響を受けやすいことも検証により分かった。 (3)ステレオ画像を利用して、左右画像に二つの方法をそれぞれ適用し、建物抽出の可能性について検討を行った。その結果では、左右画像を利用する場合は、単画像の場合より建物抽出の可能性が画像によって10-20パーセントをアップすることが可能であることが分かった。 (4)特徴に基づく手法と領域拡張法はそれぞれ適用できる条件が違うため、高分解能衛星画像から建物抽出の抽出率を向上させるために、二つの手法を併用するのが有効ではないかと考えられる。 2)これから3次元データへのニーズが増えていくのが確実である。特に、3次元データの表現(可視化)に関する研究が盛んに行われている。高分解能衛星画像から抽出された地物、特に建物の3次元可視化も大きな課題の一つである。本研究では、VRMLを利用した3次元表現の試みを行った。しかし、より高効率で3次元データを構築のために、自動テクスチャのマッピング方法の開発が必要である。 3)GISを普及するには、データベース更新の効率かつコストが大きなポイントとなる。そこで、従来の航空写真より「ダイナミック」となった高分解能衛星画像(イコノスの場合)への期待が大きい。本研究の将来への応用として、画像とGISデータベースとの重ねあわせ方法について検討を行った。
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