研究概要 |
本研究では,公共主体が公共事業の効率化を目的として市民・利用者個々人に事業の一部機能や役割をゆだねるような「市民協力型社会システム」の可能性を検討する.このようなシステムでは,公共主体による利用者や市民の「協力行動」の誘導の可否が,その効率性・有効性を大きく決定づけることになる.そのような協力誘導メカニズムが設計できれば,公共主体は利用者・市民の(誘因された)自発的協力により,本来必要であった実行費用を大幅にセーブした形で当該公共サービスの供給が可能となろう.本研究では,そのような市民参加型システムへの移行可能性を持った典型的な公共システムとして,特に,ゴミ分別収集システムを取り上げ,その実効性を理論的・実証的に考察・分析する. 本年度の研究プロジェクトを以下のように小テーマに区別し,研究を遂行した. 1.分別収集システムに関する資料収集・調査 日本各地の地方自治体で現在実施されているゴミ分別収集について,各自治体の実行方法と分別排出の達成率等の実態についての調査を行った.調査データに基づいて,分別排出達成率に影響していると思われる各自治体の施策の違いを明らかにした.また,その実効性を罰則により担保するという形態を持つ北米におけるゴミ分別収集システムの調査を行い,このような抑止論的な実行方法と本研究が提案する「市民協力型社会システム」の方法を比較分析した. 2.市民協力型社会システムの基本モデルの構築と基本分析 1.で明らかにした公共施策と住民の意思決定の特性を基に,協力行動に関する意思決定モデルをポピュレーション・ゲームモデルとして定式化し,協力行動の発生メカニズムを説明できる行動モデルを構築した.また,この基本モデルに関する感度分析等の特性分析を行った.
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