研究概要 |
1・脱窒細菌生物膜電極および炭素電極をそれぞれ陰極および陽極として設置した完全混合型生物膜電極槽を作製し,強酸性高濃度硝酸イオン含有水(pH3,200mg-N/L)を供給して種々の操作条件下で連続処理実験を行った。被処理水が強酸性でも脱窒は効率良く進行するともに処理水pHは中性領域に維持された.本系の主な成分の物質収支,電荷収支および平衡関係から処理水pHと脱窒率の関係を理論計算した結果,脱窒率15%程度以上であれば処理水は,pH6〜7程度まで中和できることが示唆され,計算結果は,実験の傾向とほぼ一致した.また,脱窒進行に伴う中和の達成は,陽極の電気化学的酸化および添加有機物水素供与体の酸化で生成する二酸化炭素による緩衝効果が大きく寄与しているものと考えられた.一方,脱窒の進行には,添加有機物と通電に伴う電解で生成する水素が効率良く利用されており,残留添加有機物のない効果的な操作が可能であった. 2.銅イオン濃度を模擬した人工排水(30mg/L)を用い,本法による銅イオン除去特性について,非生物膜系で実験的検討を行った結果,陰極における金属銅への電解還元に対する限界電流密度条件以上で操作することにより1mg/L程度以下の低濃度までの銅イオン除去と脱窒の電子供与体となる水素供給を同時的に行うことが可能であり,本処理法ではこのような通電操作が有効であることが示唆された. 3.銅イオンの脱窒活性への影響に関し,銅イオン非共存系培養脱窒細菌では,0.1mg/L程度の銅イオン共存下に初期暴露されると脱窒開始までの時間が遅れ,脱窒速度も著しく低下した.銅イオン濃度1mg/Lまでの範囲では,濃度の増大とともに脱窒開始時間が著しい影響を受けた.一方,銅イオン共存系で培養した脱窒細菌は,1mg/L程度までの範囲では,脱窒活性はほぼ等しかった.従って,数mg/L程度であれば,馴致効果が期待できるものと考えられた.
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