研究代表者はこれまでに、利根川水系上中流域を対象として、河川流量の確率分布を統計データを用いてモデル化し、さまざまな水資源管理施策や水質管理施策を水量、水質の両面から確率分布を用いて評価することを行ってきたが、今年度については、特に評価の精度の向上を目指してさまざまな解析を行った。 具体的には、対象流域における水量や水質のシミュレーションを行う上で利用した、各用途の水利用原単位、取水量の計画値、河川維持流量、上流ダム群の運用方法に関する設定、汚濁負荷発生原単位、汚濁負荷流達率、渇水被害額原単位、などのパラメータについて感度解析を行った。これらのパラメータのうち、過去に複数の調査例があるものについては、それらの値から最大値と最小値を抜き出して検討し、調査例がないものについては、そのパラメータ値の範囲として妥当な範囲を適当に設定した。 この解析の結果から、対象流域内の渇水被害額については水田における水の使用量やダム群の運用方法に対する設定などの変化の影響を受けやすいが、下流域の渇水被害額については維持流量などの設定などの影響も受けやすくなっている。また、水田における水使用や水損失率などの設定は流域内の地下水収支に大きな影響を与えている。水質については、BOD、COD、TN、TPの4項目について調べているが、畜産業からの負荷原単位がいずれの指標でも大きな影響を与えている。また、BOD、CODについては山林や市街地などの非特定汚染源も大きな影響を与えている。結果をまとめると、水田の水収支や畜産業や面源からの汚濁負荷に関するパラメータの精度の向上が、全体の評価の制度を向上していく上で求められる。
|