本年度はUV照射及び光触媒を併用した系における、各種微生物(大腸菌、大腸菌ファージ、クリプトスポリジウム)の不活化作用及び光回復作用について実験を行い、その相違から不活化機構の相違を検証した。結果として、UV単独による大腸菌の不活化速度と光触媒併用による不活化速度の差は生じなかった。しかし不活化後の光回復速度には大きな差が生じることが観察された。つまり光触媒によって生成されるヒドロキシルラジカルもしくは活性酸素といった酸化剤によって、光回復作用を阻害することが確認され、不活化作用に比べより外的因子に対する感受性が強いことが示唆された。また、クリプトスポリジウムに関して不活化実験を行った結果、UV照射と光触媒による相乗効果が確認され、UVによる不活化機構がその他の微生物の場合と異なる可能性が示唆された。 さらに遺伝子学的手法としてDNAの二量体を直接検出、検量できると思われるESS法(Endnuclease sensitive sites法)を大腸菌、及びファージに適用できるかどうかの実験を行った。この方法は、Microccusから抽出した二量体生成DNA切断酵素をもちいるものであり、その水処理系指標微生物への応用は前例が少ない。実験結果として大腸菌に関しては、その適用が十分可能であることが確認され、来年度はプレートによる生存率との相関性について検討する予定である。ウイルス代替微生物である大腸菌ファージについては、現在その適用可能性を検討中である。
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