環境汚染物質中の内分泌撹乱物質を同定するために、申請者はダイオキシン受容体に着目し、この受容体に対する親和性によって毒性を評価し、主要な毒性物質の同定を試みた。下水、焼却灰、道路粉塵などを対象にして、それらにダイオキシン様活性物質がどの程度含まれているか、HPLCによる分画と、酵母を用いたバイオアッセイを組み合わせて評価した。この酵母には、人のダイオキシン受容体とArnt遺伝子が組み込まれており、さらにダイオキシン反応性部位の遺伝子配列とその下流にレポーター遺伝子としてlacZ遺伝子が組み込まれている。従って、ダイオキシン様の物質をスクリーニングすることが可能である。この系を用いて調べた結果、下水中や、道路粉塵中で強いダイオキシン様活性が観察された。下水中のダイオキシン様物質について、詳しく調べていくと、それは人間の尿由来である事がわかった。より詳細な研究を行い、最終的に物質を単離精製し、化学構造を同定した。この結果は現在投稿中である。道路粉塵中のダイオキシン様物質は、HPLC-バイオアッセイの方法で、少なくとも6種類の主要な物質が存在することが明らかとなった。さらに既知のダイオキシン様物質や多環芳香族化合物の寄与率を調べたところ、それらの寄与は非常に小さく、ほとんどすべての活性が末知の物質によるものであると思われる。今後は、この未知のダイオキシン様物質の化学構造を決定する予定である。
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