都市域の熱環境と空間的に評価する場合、数値モデルによる計算結果は有用な情報の一つである。しかし、この結果だけでは、エネルギー消費や住民の意識とを関連付けることができない。そこで、数値モデルの計算で得られる気温をもとに、簡単な建築モデルを仮定することにより、空調に必要とされるエネルギー量(冷房負荷)を見積もることを試みた。具体的には、福岡市域を解析対象として、外気温(数値モデルによる計算気温)と空調温度(仮定)との差を求め、この結果と仮定した建築モデルと住宅分析情報から、都市域の住宅の冷房負荷(量)の時間・空間分布図を作成した。この解析では、外気温に加えて住宅の分布情報を用いているため、計算気温の分布情報だけでは推定することが難しい都市域全体についての空調エネルギー需要の分布状況を見ることができた。 現時点では、使用できる情報の制約があることや、簡単な建築モデルを用いていること等の理由のため、現実のエネルギー消費量に近い値を見積もるまでには至っていないが、数値モデルによる計算結果から、気温・湿度という評価尺度だけでなく、エネルギーという指標で、都市域全体について空間的に議論することの可能性を示すことができた。 また、熊本市域を対象として行ってきたこれまでの解析結果を用いて、都市の表面温度、気温、湿度、人為的な排熱(家庭、事業所、自動車交通)等の分布と、市内5箇所で実施した住民アンケート調査結果との関連付けを試みた。
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