本研究では、1)都市熱環境モデルによる都市域の空間・時間的な空調エネルギー負荷推定、2)従前の研究成果及び既存情報による都市域の熱環境評価、3)アンケート調査による快適さとエネルギー消費についての都市内地域差の比較・考察を行った。 1)の解析では、福岡市域を解析対象として、数値モデルによる計算結果と建築モデルを統合することにより、空調温度の設定(25℃、28℃)に対する都市域の時間・空間的な空調エネルギー需要の推計を試みた。また、より現実に近い分布形状を得るために、家庭の夏季空調エネルギー負荷と家族形態とを関連付けた解析を行った。家族形態として世帯の構成を考え、5つのカテゴリーを想定し、計算に取り入れた。また、将来の家族形態(世帯構成)の変化を仮定し、夏季空調エネルギー負荷の変化を計算・考察した。この方法は、住宅構造、気温分布、ライフスタイル、空調エネルギー消費等を同時に関連付けて議論できる利点があり、得られる情報次第でより詳細な計算も可能である。 2)の都市域熱環境評価では、熊本市を対象として、衛星データや数値情報から作成した分布図(標高、緑被率、輝度温度図、8月・1月の平均気温、家庭・事業所・自動車交通による人工排熱)をもとに同市の熱環境の特徴について評価した。 3)では、熊本市中心部及び東西南北の任意の集合住宅を対象として熱環境(快適さ)とエネルギー消費についてアンケート調査を実施した。質問項目は、回答者属性、住居、環境への意識・関心度・配慮・行動、エネルギー消費、空調機器使用状況、夏・冬の快適さ、周辺環境である。この結果をもとに熊本市域の熱環境の地域差について考察した。調査結果は、2)の評価結果と比較して、特に西部(海に近い地域)と中心部の比較において良い対応が見られた。
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