鉄骨鉄筋コンクリート(以下SRC)造柱梁接合部の終局剪断耐力について、当研究機関では過去に現行の日本建築学会SRC規準式の不適合性を指摘し、修正式の提案を行った。昨年度の実験結果から純SRC構造柱梁接合部の有効幅の取り方について、現行のSRC規準では過大及び過小に評価される可能性があることが分かり、今年度は純SRC柱梁接合部の有効幅および提案している修正式の適応範囲について実験的に検討をおこなった。試験体は平面十字形とし、実験変数は柱鉄骨H形弱軸断面、扁平柱断面の強軸弱軸加力、梁の偏心、コンクリート強度、柱鉄骨T形断面化とし、計7体製作した。加力は変位漸増繰り返し静的加力とし、各部の荷重および変形を随時記録した。試験体は1体のみ梁曲げ降伏後接合部せん断破壊となり、それ以外の試験体は全て接合部せん断破壊した。実験の結果以下の知見を得た。破壊性状において、扁平柱で内包鉄骨の直交フランジが偏心した場合、圧縮ストラットの形成が非対称となる。加力方向の梁が偏心した試験体は偏心した側のせん断破壊が顕著で、反対側はせん断亀裂は発生したものの破壊の程度は軽微であった。接合部終局せん断耐力について、実験値/計算値の比較をすると、SRC規準式では平均で1.37、修正式では平均で1.03と修正式の方がよい対応を示しており、SRC規準式は実験値を過小評価していることが分かる。加力方向の梁が偏心した場合及び直交梁が偏心した場合のどちらにおいても偏心していない場合に比べ耐力が1割程度低下する。よって、梁が偏心している場合の有効幅は、現行のSRC規準を用いると危険側に評価される場合があるので、注意が必要である。コンクリートのせん断強度式において高強度コンクリートを使用する場合、SRC規準式は過小に評価し、修正式は適応性がよいことが分かった。
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