1.前年度に購入および開発した計測処理解析システムを用いて、地盤構造既知の地点において、単一走行する乗用車により生じる地盤振動の同時多点計測を行った。計測された振動波形に対してF-kスペクトル解析を行い、その伝播速度および距離減衰特性を求め、これと地盤構造から理論的に求められる値との比較から、振動源近傍での交通振動の伝播特性について検討した。その結果、1)計測された振動波形には最近点通過時の車両荷重が圧倒的に寄与していること、2)高次モード表面波を用いて実体波を模擬することで、ノーマルモード解(表面波)のみでも計測された振動波形を概ね説明できることを示した。 2.任意の地表1点で得られた3成分速度時刻歴から地表点加振を仮定して振動源荷重時刻歴を逆算する手法を提案し、対応する計算プログラムを開発した。1.の計測波形を用いて提案手法により振動源荷重を逆算し、そのスペクトル特性を求めたところ、既往の研究報告と概ね整合する結果が得られた。このことは、車両通行荷重時刻歴の推定における提案手法の妥当性・有効性をある程度示すとともに、逆に、推定された車両通行荷重および地盤構造を用いて、任意地点での交通振動時刻歴を予測できる可能性を示唆している。 3.本研究を遂行する途中、トルココジャエリ地震、台湾集集地震、鳥取県西部地震、インドグジャラート地震などの巨大地震災害が相次いで発生した。地表での地震動特性および建物被害の空間分布には表層地盤構造が大きな影響を与えるが、これを任意の地点で簡便かつ精度良く評価することは容易ではない。昨年度の研究実績の概要3.から、交通振動および微動のH/Vスペクトルは表面波のそれの特性を示し、これを逆解析して地盤構造を推定できる可能性が示唆される。そこで、本研究の応用として、上記被災地のいくつかにおいて交通振動および微動の1点3成分計測を行い、H/Vスペクトルを求め、その逆解析から表層地盤構造を推定した。推定結果の妥当性は、既往の地盤資料あるいは地震応答解析結果および実際の建物被害分布との比較からある程度検証された。このことは、交通振動の地盤地震工学への応用の可能性を示唆している。
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