本研究では、工学で用いられる先端的な圧縮性乱流数値解析手法を用いて、火災により建物内外で発生する乱流熱輸送及び汚染物質輸送のメカニズムを解明することを目的とする。平成11年度の研究実績は以下に示す通りである。 1)火災・熱対流のデータの収集 既往の火災、機械分野等での高浮力プリュームに関する文献調査を行い、建物内外において利用可能な熱対流・汚染物質輸送解析のための基礎資料を作成した。また、既往の実験による火災時の熱対流及び煙流動の特性(代表温度差に対応する気流分布、温度分布、汚染物質濃度分布および非定常的な種々の物理量の増加、減衰過程)に関するデータを整備した。 2)圧縮性を考慮した流れ場・温度場の予測モデルの開発・検証 通常の比圧縮性流体(浮力項のみ密度変化を考慮するBoussinesq近似)の予測モデルを圧縮性流体の基礎方程式(基礎方程式から音波の伝搬を除去した低マッハ数近似式)を用いた予測モデルに拡張した。加熱壁近傍の対流熱伝達量の解析を行い、実験データ・理論値との比較によりその予測精度を検証した。 3)乱流モデル(圧縮性LES)の組み込み 火災時のような複雑流れ場では、主として気流性状、温度性状は乱流状態を呈するため、乱流モデルとして予測精度、非定常性等の面で優れた圧縮性LESを2)で開発を行う予測モデルに組み込んだ。これにより、火災時に生じる高浮力プリュームの解析が可能となった。
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