1.3次元音場解析のための高速多重極アルゴリズムの構築 3次元音響問題の基本解を多重極展開表現とする変換式を導入し、境界要素法における影響関数の多重極展開ならびに展開係数の変換を定式化した。引き続いて、高速多重極アルゴリズムにおける領域の階層構造化について考察した上で、影響関数の多重極展開、セルによる階層構造化、展開係数の変換、連立一次方程式の反復解法を一連のプロセスとして、音場解析に向けた高速多重極境界要素法の計算アルゴリズムを構築した。 2.影響関数の評価法と多重極展開の近似精度に関する検討 上記アルゴリズムにおいては、影響関数を評価する際に波数空間上の数値積分および無限階級数和の打ち切りが必要となる。基本解の多重極展開表現に対して積分点数および打ち切り次数に関するパラメトリックスタディを行うことにより、近似精度と両者との関係を解明し、積分点数および打ち切り次数の実用的な設定方法を提案した。結果的に、解析周波数とセル構造に依存する打ち切り次数の推奨式が得られた。 3.高速多重極境界要素法の計算精度および効率化に関する検討 上記検討の結果を踏まえて、室内音場予測システムの中核となる高速多重極境界要素法のコーディングを行い、音場解析プログラムのプロトタイプをワークステーションに実装した。厳密解の得られる音響管問題を解析対象としたケーススタディを実行し、計算精度面から高速多重極境界要素法の妥当性を確認した。さらに、解析対象の自由度を可能な範囲で変化させたパラメトリックスタディを通して、計算時間および記憶容量と自由度との関係を解明し、他の数値解析手法との比較から本手法の計算効率が極めて高いことを実証した。一方で、理論的考察によって計算時間および記憶容量を概算し、本手法の適用によって両者が自由度のオーダーレベルで効率化されることを示した。
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