振動発生を予知しない状況下における水平振動知覚実験

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11750531
• 研究機関: 日本女子大学
• 研究代表者: 野田 千津子 日本女子大学, 家政学部, 助手 (80270221)
• キーワード: 水平振動 / 知覚閾 / 居住性能 / 予知 / 性能評価 / 生活環境 / 周辺要因 / 感覚評価

研究概要

1.はじめに 研究者らも過去に実験を行ってきたが、これまでの実験においては被験者は実験の開始、すなわち振動の発生を告げられた後、実験に臨むことがほとんどである。しかし、実際の生活環境で振動の発生を予知する居住者はほとんどなく、この違いが知覚閾に及ぼす影響を知る必要がある。そこで本研究では振動の発生を被験者に直前に知らせずに、できるかぎり意識しない状態で被験者実験を行う。
2.結果 本年度は、被験者が振動の発生を予知せず、また振動の発生をできるかぎり意識しない状況における実験方法を検討した。振動台上に設置した居室内は、居住環境に近い内装を施し、カーペット、エアコンなども設置した。実験者との接触の機会をできるかぎり少なくするよう、CCDカメラによるモニタリング装置や居室全体がみわたせる画面分割装置なども利用した。被験者は1名とし、この居室内で床に座る。実験者は被験者に予告せずに振動を入力し、被験者はそれを感じた場合のみ実験者に合図する。この際の振動の入力間隔をランダムにし、かつ10〜30分程度と長くすることで、被験者が振動の発生を意識して構えた状態をできるかぎりなくそうとした。また、その際には本や雑誌、テレビなども見て良いこととし、被験者の意識が紛れるようにした。比較対照するために、約30名の同じ被験者に対して振動の発生を直前に被験者に予告した上で、被験者が振動を感じる実験も同時に行った。その結果、振動の発生を予知しないことで、水平振動の知覚閾における加速度は大きくなることがわかった。その影響量は振動に対して敏感な範囲では小さく、振動数がより低くあるいは高くなり感覚が鈍くなるほど大きくなる傾向にある。
3.今後の研究課題 本年度の結果によって、振動発生の予知による水平振動の知覚閾の特性を知ることができた。今後はデータ数を充実した上で、確率的な評価やISOとの対比を検討したいと考えている。性能設計に有効な揺れ性能のレベル設定に反映できる資料として纏る計画である。

研究成果

• [文献書誌] 野田千津子: "居住者の揺れ感覚に基づく住居の性能評価"日本家政学会第51回大会研究発表要旨集. 224 (1999)
• [文献書誌] 野田千津子: "視覚が水平振動感覚に及ぼす影響動感覚とその評価"日本建築学会大会学術講演梗概集(環境工学I). 307-310 (1999)
• [文献書誌] 北川陽子: "周辺要因が水平振動の知覚閾に及ぼす影響-その1 対象実験の概要-"日本建築学会大会学術講演梗概集(環境工学I). 319-320 (1999)
• [文献書誌] 田宮麗子: "周辺要因が水平振動の知覚閾に及ぼす影響-その2 被験者の意識の違い-"日本建築学会大会学術講演梗概集(環境工学I). 321-322 (1999)
• [文献書誌] 石川孝重: "周辺要因が水平振動の知覚閾に及ぼす影響-その3 評価曲線の提示-"日本建築学会大会学術講演梗概集(環境工学I). 323-324 (1999)
• [文献書誌] 野田千津子: "水平振動を受ける被験者の状況が知覚閾に及ぼす影響"日本建築学会計画系論文集. 第524号. 9-14 (1999)
• [文献書誌] 野田千津子: "視覚が水平振動感覚に及ぼす影響に関する研究"日本建築学会計画系論文集. 第525号. 15-20 (1999)
• [文献書誌] 石川孝重: "超高層建物における居住者の揺れ感覚に関する調査研究"日本女子大学紀要 家政学部. 第47号. 49-56 (2000)
• [文献書誌] 野田千津子: "生活環境に近い状況下における横揺れに対する感覚とのその評価"日本女子大学大学院紀要 家政学研究科・人間生活学研究科. 第6号. 109-117 (2000)