本研究は現地調査によって収集した情報を文献調査の裏付けを行いながら整理し、タイにおける住居の空間構成の特徴を明らかにし、タイと日本の建材再利用状況や建設方法などの実態を整理し、地域環境に適応した住居システムを考える上で必要な視点を明らかにすることを目的としている。研究実績は以下の通りである。 1.タイの伝統的住居集落に関する文献調査 タイにおける伝統的住居集落に関する文献リストの作成を行ったうえで、それらの文献から住居の形態と空間構成、環境適応のための工夫、建設組織、建材の再利用状況、民家の再生・建材再利用にあたっての禁忌、建築儀礼等に関する地域特性について明らかにした。 2.現地調査資料の整理および1.の作業をもとにタイにおける居住環境の空間構成モデルの図式化 現地調査資料をもとに農村住居の居住環境、とりわけ住居をとりまく空間変容のパターンについて空間構成モデルを図式化する作業を行った。一方、都市の住宅については、住宅供給の変遷からみた都市住宅の類型化を行い、それぞれの住宅の特徴を明らかにした。それらをふまえ、農村および都市住宅において共通してみられる空間特性があることが分かった。それは住居のなかでフォーマル、インフォーマルな生活に対応した空間であり、住居の本質的空間とも考えられ地域環境に適応した住居計画のあり方を考えていくうえで考慮する必要性を指摘しつつある。 3.日本における民家の再生事例調査 群馬県、山形県および京都府美山町において再生民家の事例調査を行い居住者、建築家、行政、NGOの関わりについて明らかにした。また、行政機関へのヒアリングを通して、県内森林の利用状況、地場材の利用状況等を把握し、木材資源や住宅のリサイクル活動に関わるネットワークの活動を把握した。タイ農村部では木造民家の再生や建材のリサイクルが頻繁に知人や村の人的ネットワークを通じて行われている。
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