本研究の目的は、歴史的環境の保全・再生・活用におけるNPO組織の活動および社会的基礎整備の実態について、取り組みが始まったばかりの日本、NPO先進国であるアメリカ、日本とアメリカの中間に位置づけられるカナダの3国を事例に調査し、さらにNPOの意義、役割、そして活動基盤の成立条件を3国の比較を通じて分析することにある。 本年度は、国外および国内の関連文献を収集し、調査・分析の枠組みを構築した上で、アメリカ・マサチューセッツ州・ボストン市において、ヒアリング調査、資料収集、実地視察等を行った。その結果、これまでに把握していなかった、連邦、州、市および近隣の各レベルにおける新たなNPO団体の存在が明らかになった。特に、プリザベーション・アクションのような連邦レベルのアドボカシー団体や、バックベイ近隣協会のような近隣レベルのコミュニティ活動団体の実態が明らかになった点は、有意義な知見であった。また、各活動団体の設立の契機、スタッフ、年間予算、事業の進捗状況、他のNPOとの連携、行政との関係、などの分析項目に関する最新の情報を入手することができた。さらに、日本においても、過去に把握していたNPO団体に対する追跡ヒアリング調査を行ったほか、NPO法の施行などを背景に、各地で設立されている新たな活動団体に関する情報収集を行った。今後は、これらの成果を分析枠組みに反映させた上で、さらに把握すべき分析項目に関して、カナダを中心に3国における現地調査、文献収集等を行い、3国の比較分析へと展開する計画である。
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