近年、単身者や夫婦世帯の増加が住宅需要動向に大きな影響を与えている。そこで、従来はほとんど注目されていなかった中高年単身者の住宅事情について分析を行った。本年度は、首都圏の中高年単身者について年齢、男女、配偶関係等の様々な属性別に、国勢調査(昭和55年、60年、平成2年、平成7年)および住宅統計調査(昭和63年、平成5年)を用いて住宅事情を整理した。地域単位は、市町村レベル、1キロメートルメッシュ単位、町丁字レベルといった複数の分析単位を用いている。中高年単身者の住宅事情をみると、50代前半以下の世代では、男性の未婚者の割合が高く住宅所有関係は民間の賃貸住宅が中心であり、一人当たり延べ床面積の平均は千葉県と埼玉県では40平米程度あるが、東京都では30平米以下となっている。50代後半以上の世代では死別した女性が大半をしめており、持ち家が中心で居住水準は高くなっている。国勢調査の1キロメートルメッシュ単位で地図化を行い、首都圏における中高年単身者の居住地構造をみると、女性単身者は男性単身者に比べて都心地域に居住していることが明らかになった。さらに、出生コーホートによる居住地の検討からは、若年単身者の都心地域への流入と20代後半以降の流出傾向に関して、地域的に分散化するという変化がみられ、中高年単身者の居住地選択についての影響を今後検討することが必要であることがわかった。
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