1.既往文献と実地調査をもとに、16〜18世紀末期までに建てられた日本各地の民家119棟を選出し、架構図を整備したのち、軸組の主要な構造柱と最下層の地梁を抽出した梁伏図により、各棟のフェイスシートを作成した。 2.上屋の周囲と部屋境に柱が立ち並ぶ形式を基準型として架構を分析し、基準型に地梁が付加された列柱式、大黒柱を中心に四方に梁を配る大黒柱式、1対の柱とこれを結ぶ梁を基本としてこれを並べた鳥居式の各類型を抽出した。これらの類型の柱・梁の配置を比較した結果、柱の少ない大黒柱式や鳥居式が、柱の多い列柱式から発達したものと単純に考えることはできず、地域ごとの架構形式の固有性が類型の違いとなって表われていることを示した(成果公表済み)。 3.軸組における類型と、小屋梁回りの納まりである折置・京呂の対応について、地域および年代の両面から分析を行なった。その結果、軸組類型と小屋梁回りの類型の対応から、傾向の異なる6地域を抽出した。特に近畿地方では、列柱式から大黒柱式および折置から京呂への年代的変化が起こっているのに対して、他の地域では、軸組、小屋梁回りともに変化が起こりにくいことがわかった(成果公表済み)。 4.今年度は、軸組と小屋組を各々類型化し、その対応により地域差を概観したのであるが、架構法の異同性を原理的に把握することができなかった。このため次年度は、軸組に的を絞り、様々な架構の系統の差異を考究する予定である。
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