本研究は、90年代以降の、市民参加の時代の都市ビジョンに基づくマスタープランのスタイルを見出すことを目的としている。研究では、このようなマスタープランは、マスタープランの担い手、担い手と作り手の間に設けられる市民参加の場、その結果つくられる計画文書の3点の相互作用によって作られると考え、各点において充実した取り組みが見られる事例の資料を11都市分収集し、7都市のインタビュー調査を行い、データベース化の作業を行った。 マスタープランの担い手については、行政以外の担い手(NPOや市民組織など)を、滋賀県近江八幡市や岡山県津山市における調査を通じて抽出した。担い手は、従来のまちづくり協議会や住区協議会というモデルを超えて多様化しており、8程度のモデルが存在することが分かった。また、各担い手を調整するパートナーシップモデルがあり、そこにおけるNPOセンターなどの調整セクターの役割を明らかにした。市民参加の場については、行政主体型と主体形成型の2つのスタイルがあることが分かり、主体形成型において有効なワークショップなどのテクニックを抽出した。計画文書については、従来の地区カルテ型のもの、イメージ図型のものに加えて、景観形成分野で発達した景観資源の調査図や、商工観光の分野で発達した博物館都市構想、環境保全の分野で発達したエコミュージアムなどで作られる計画文書、市民活動の中から提案的にまとめられた計画文書が実際の市民まちづくり活動に影響を与えていることが分かった。これらの図書の編集様式は、白書型、提案集型、計画型、ルール型の4つに類型化され、それぞれがパタンランゲージなどにより表現されていることが分かった。以上の分析で得られた一連の計画文書の組み立てを法令や自治体の条例などの手段を用いながら、制度化する手法の検討を、具体的に山形県鶴岡市においてケーススタディした。
|