研究概要 |
本年度は,まず研究対象とする大規模空間として,2つのキャンパス(早稲田大学人間科学部,秋田県立大学システム科学技術学部)を選定した。 そのうち1つのキャンパス(早稲田大学人間科学部)において,建物の図面の収集,寸法測定,写真撮影を行った。それらの資料をもとにCG及びVRパノラマムービーを作成したが,全ての空間についての作業はまだ終わっておらず,現在も作業中である。詳細な空間の再現を試みた結果,モデリングデータの量が膨大なものとなったため,予定よりも作業が遅れている状態である。 もう一方のキャンパス(秋田県立大学システム科学技術学部)においては,実際の空間に対する認知を調べる実験を行った。実験は,実験場所を学生が毎週定期的に利用しているある一カ所に固定し,そこから建物の様々な場所までの移動時間を予測させる実験である。また同時に,被験者の距離感覚に関する調査もいくつか行った。これらの結果は現在単純集計が終わり,いくつかの分析をすすめている。ある数値で回答させるスタイルの実験は,被験者の回答能力に依存する面があり,あまり高い精度は得られないと思われた。しかし,今回の結果からは,各被験者間のばらつきは当然予想されたようにみられたものの,被験者自身の各地点に対する移動時間予測値は,ある程度の一貫性をもって回答が得られているようである。従って,個々人について何らかの距離を評価基準とすれば,その値を基準として各値を計算し直すことで,分析が可能となると予想される。また歩行速度や利用頻度などとの関係も重要であると思われるが,歩行速度の測定は行っていないため,追加で実験を行う予定である。今後はCG作成をすすめ,CG空間による実験も加えて分析を行う予定である。
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