パリ市の歴史中心地区の一つに数えられる第II区(2eme arrondissement)に属するボンヌ・ネーヴェル地区(Quartier Bonne-Nouvelle)とマイユ地区(Quartier du Mail)を研究対象として取り上げた。そして、両地区に関する18世紀初頭から今日に至る地籍図(cadastre)を主な一次資料として分析し、そこから両地区全域にわたる個々の地割(parcelle)を可能な限りすべて精確に割り出した。抽出された地割は、GIS(地理情報システム)を用いて地割組織図(plan du tissu parcellaire)へと統合、復元図化(原図縮尺1/2000)した。 今年度は、平成9.10年度科学研究費補助金奨励研究Aを遂行の結果新たに浮かび上がった課題のうち、次の地割組織図の復元を行った。 (1)ANIV seine 64(Terrier de la Censive de l'Archeveche dans Paris(1772-86)という一次資料に基づく18世紀末の地割組織図。これにより、フランス革命を機にフィユ・ディユ修道院がパサージュ・デュ・ケールヘと変遷した過程が地割レベルで明らかにされた。 (2)ボンヌ・ネーヴェル地区、マイユ地区の南に位置するレ・アール地区(Quartier des Halles)の地割組織図を、フランソワーズ・ブドン(Francoise BOUDON)らの作成した図をもとにGISで再作成し一続きの図とした。これにより、セーヌ右岸の都市展開の状態を明らかにした。 (3)19世紀初頭の地割組織図に1968年ごろの街路状態を重ね合わせた図。これにより、オスマンの改造事業以前と以後との変遷が明確になった。 以上
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