研究概要 |
平成11年度および平成12年度の2ヵ年にわたる研究を申請し、そのうち平成11年度については、おもに建築家ヘルマン・ムテジウスの日本滞在日記の現地調査および分析方法の構築を目的として、以下の2項目について研究実施計画を立案した。以下、その成果について概要を述べる。 1.ムテジウスの日本滞在日記の調査 ムテジウスの日本滞在日記はベルリンの芸術アカデミーに保管されているという情報を入手していたが、現地調査の結果、ドイツ工作連盟資料館(Werkbundarchiv,Berlin)に関連資料が集められていることが判明した。資料は、書簡、葉書類、雑誌論文等の写し、覚え書き等に用いられた手帳などから構成され、また、ムテジウスの実質上処女作品となるプロテスタント教会(東京)に関する詳細な図面類が保管されている。写真資料については、この教会の竣工写真や日本の風物に関するもの、ポートレートなどが多い。日記については、ムテジウスの日々の活動を記録するものとしてとくに日記形態をとっているものは残されていないことが今回の調査でわかった。ただし、頻繁に書き記された書簡類が状態よく保管されており、ここに日本の建築、文化に対するムテジウスの観察が反映されていると考えられ、日記に代わるものとしてこの書簡類が主たる研究対象となることを確認した。 2.日記分析の視点、方法の構築 上記のムテジウスの書簡類をおもな分析対象として、関連する資料も用いながら、とくに(1)ムテジウスの日本建築観と主著『英国の住宅』にみられる近代建築像の比較、考察、(2)日本滞在中エンデ&ベックマン事務所においてムテジウスが担った役割の明確化と官庁集中計画の詳細についての分析、(3)日本の風俗、文化全般に対するムテジウスの関心の対象化、などの視点について継続して分析をおこなう。なお、保管されている書簡類は膨大な量にわたり、判読に時間を要するため、再渡独による現地調査があらためて必要になる場合も想定される。
|