研究概要 |
今年度は今年度申請計画に基づき,超高圧電子顕微鏡を用い電子線照射を行い以下の研究成果を得た。 オーステナイト系のFe-Cr-Ni合金を作製し,アーク溶解,冷間圧延を行ってから径3mmのディスクを打ち抜き溶体化処理,電解研磨を行いTEM試料を作成。次に超高圧電子顕微鏡を用いて電子線照射を所定温度で各種の粒界近傍で行った。この後高分解能TEM(JEM2010F)によりEDS濃度分布測定,また粒界方位については原子構造像と回折パターンより決定した。 Fe-Cr-Niの照射誘起粒界偏析はその性格に敏感であり,粒界の方位依存性があることが明確に示すことができた。また低Σ地の粒界は特に偏析が抑制される。[110]傾角の依存性はその角度が大きいほど偏析は大きくなった。これから推察できることは粒界エネルギーの大小,界面歪が誘起偏析の大きさを決定しており,これは粒界が照射によって生成される格子欠陥の消滅場所であることから消滅の効率が粒界ごとに異なることを意味している。これらの成果はこの研究を通じてはじめて明らかにされた知見であり,今年度は2つの国際会議を通じて成果の報告を既に行った。また現在これらの研究成果を国際的な雑誌に論文を投稿中であり掲載受理の報告を待っている状態である。
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