C60-C70の2元系の状態図を作製するため、種々の組成C60:C70=1-x:x(0≦x≦1)の混合物を粉末X線回折法により調べた。x=0.05もしくはx=0.95の比で、純C60粉末および純C70粉末を機械的に混合し、300〜400℃で熱処理した試料では、処理の前後でX線回折図形に変化が認められず、固相反応法による固溶体の作製は不可能であった。このため、トルエン溶液に溶解させ、溶媒を蒸発させることにより混合粉を得て、真空熱処理を施す方式をとった。 (1)蒸発直後では、すべての組成においてAmm2斜方晶の溶媒化合物が形成されるが、フイラーレン分子に着目すると、この段階では均一に固溶している。なお、xが小さくなるに伴ってこの化合物は不安定になり、x=0においては室温で数10分後に溶媒分子は抜けた。 (2)250℃においてはすべての組成で分解が起こる。300℃で熱処理することにより、C60-C70混合相を得た。X線回折図形上でのピークの有無による判断ではx=0.25〜0.95ではC60固溶体とC70固溶体の2相共存であった。したがって均一相が分離するため、C60-C70系は全率固溶体系ではない。 (3)C60固溶体領域における格子定数の濃度依存症において、x=〜0.1まではべガード則に従って直線的に増加するが、x=0.1〜0.3では概ね一定であった。したがってこの結果からは固溶限はx=0.1程度と解釈される。 (4)(2)と(3)の食違いは、x=0.3程度の結晶構造が非常に良く似た中間化合物相の存在により説明が可能で、現在、透過電子顕微鏡を用いて調査中である。
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