C60とC70はともに炭素の篭型構造分子であり、化学的性質も似ているため、相図的には全率固溶であると考えられる。ところが、寸法が約6%程度異なるため、サイズ効果により2相分離してもおかしくない。実験的には、全率固溶および相分離のいずれの報告もなされ、なぜこの食い違いが起こるのかについて詳細が不明のままである。 本研究では溶剤に溶かしたC60およびC70を所定の比で混合し、溶媒を蒸発させることにより混合粉を得て、真空熱処理を施す方式によりC60-C70の2元系試料を作製した。相関係をX線回折および透過電子顕微鏡観察により調べた。 すでに昨年の研究において、溶剤をトルエンとした場合には、組成比x=0.25〜0.95の領域でC60固溶体とC70固溶体の2相共存であることを示した。同様にベンゼンにおいても2相共存であったが、得られた試料の結晶性がトルエンに較べて著しく悪く、溶媒の種類に依存することが示唆された。 そこで本年は、ヘキサンからノナンまでのアルカン系の溶剤から試料を作製し、調査を行った。 (1)C60およびC70のいずれの場合においても、直接的にフラーレンが晶出するのではなく、まず溶媒化合物が形成され、それを200℃程度で熱処理すると、フラーレンのみの混合物が得られる。 (2)その溶媒化合物の結晶構造においては、解析しきれなかったものもあるが、3種類の同定に成功した。これらはすべて正方形の2次元格子の積層で理解される。 (3)熱処理により得られたフラーレン混合物は2相共存型であったが、結晶性は非常に悪い。
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