研究概要 |
今年度はFe-Ni-Co-Ti合金のオーステナイト域での時効によって内部組織が完全双晶である熱弾性型と転位組織である非熱弾性型薄板状マルテンサイトが同じ母相から現れる点について研究を行い以下のような結果を得た。 1.非熱弾性型薄板状マルテンサイトは内部組織がレンズ状マルテンサイトと同じ転位で構成されているにもかかわらず、界面の移動によってマルテンサイト変態・逆変態する事が明らかになった。 2.時効によってオーステナイト中に析出したγ′-Ni_3Tiは熱弾性型薄板状マルテンサイト内には整合性を保ち、自らの構造を変えながらマルテンサイトに受け継がれるが、非熱弾性型薄板状マルテンサイト内には整合性を保たずそのまま受け継がれる事が明らかになった。 3.それぞれの薄板状マルテンサイトの格子定数を測定したところ、熱弾性型薄板状マルテンサイトのc/aは1.1であるのに対し、非熱弾性型薄板状マルテンサイトのc/aはほぼ1であり、その値もばらついていた。 4.それぞれの薄板状マルテンサイトの方位関係を測定し、マルテンサイトの現象論から得られた解との比較を行った結果、2種類のマルテンサイトとも計算結果に近い値が得られた。 2で述べたようにγ′析出物はマルテンサイトの種類によって受け継ぎの形態が異なる。この事は変態時に必要な活性化エネルギーがγ′を変形させる分熱弾性型薄板状マルテンサイトの方が必要であることを示している。この差が高温側で非熱弾性,低温側で熱弾性薄板状マルテンサイトが現れる要因であると考えその模式図を提唱した。
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