本研究は難加工材料であるセラミックスの新しい加工法のひとつとして期待されている超塑性加工後の組織変化を透過型電子顕微鏡で観察している。セラミックスでもサブミクロンの微細粒にすることにより超塑性加工が可能となる。セラミックスの超塑性は高温における粒界すべりと密接な関係があるが未だ不明な点が多く、超塑性変形前の界面構造は少しずつ明らかとなっているが、超塑性変形後の粒界の構造はほとんど解明されていない。その理由の一つは超塑性加工後の試料内部にはcavity発生によりポーラスとなっており検鏡試料の作製が困難なことが挙げられる。 そこでまず、100%程引張り変形したジルコニアセラミックス(3mol%Y_2O_3-ZrO_2)を用意し、細心の注意を払い検鏡試料を作製した。TEMによる組織観察を行った結果、粒内には加工変形による転位が観察された。しかし結晶粒は等軸形状であり特に引張り方向に依存したような組織は観察されていない。また通常倍率の観察範囲内では界面および粒界多重点には特に異質な組織は観察されず変形前試料の粒界組織と大きな違いはなかった。超塑性変形による試料の破断はcavityの連結により生じるが本試料ではcavityの連結を示唆するような局所的な分布などは観察されなかった。これは検鏡試料の変形量が100%程度で破断前に引張り試験を中断させたためと考えられ、さらに変形を加え破断させた試料ではcavityの形状が引張り方向に依存した組織が観察された。これまで電子回析により変形試料の100以上の結晶粒方位の特定を行った。現在隣接する結晶粒との結晶方位関係について統計的処理を行っている。この結果より引張り方向との関係、方位関係について幾何学的な検討を行う。
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