超塑性加工後のセラミックスの組織観察を行い界面構造および結晶方位関係を検討した。試料はセラミックスで最初に超塑性が観察された3Y-TZP(3mol%Y_2O_3-ZrO_2)とし100%引張変形のものについて組織観察を行った。 その結果、結晶粒は変形後においても等軸形状であるが粒内には加工変形による転位が観察された。これはセラミックスである3Y-TZPの超塑性の変形機構は粒界すべりが主であると考えられているが転位による変形も生じていることが示唆された。また試料にはサブミクロン程度のcavityと判断される局所的に薄い部分が観察されたがその分布は一様であった。cavityは特定な形状を示しておらず引張り方向との関連性は観察されなかった。試料の破壊がcavityの連結や成長により起こるがその様子を示唆するようなものは観察されなかった。さらに約200の結晶粒について方位を測定した結果一様な結晶粒の方位分布となっていた。つまり転位組織は観察されたが引張り方向に対して特定な方位を持った加工組織にはなっていない。また200以上の粒について粒界性格を測定した結果8割以上がランダム粒界となっており対応粒界が1割程度、低角粒界は1割以下であった。これより高温において試料には引張り応力により転位が導入され転位による変形もあると考えられるが超塑性伸びはランダム粒界の粒界すべりによって実現されると考えられる。以上の観察結果よりcavityや転位が観察されたが100%の変形後においても引張り方向に依存するような組織は形成されていない。本試料の破断は約150%の変形量で起こることから本研究で観察された組織は超塑性変形中期のものと考えられ、それゆえcavityの引張り方向に依存した形状や分布はみられず、粒界はランダム粒界が支配的となったと言える。一方、圧縮試料ではcavityは観察されないが同様の結果であった。
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