本年度は以下の3テーマについて研究を進め成果を上げた。 1.有機カルボン酸とチタンアルコキシドの複合体を作製し、その熱処理により細孔構造の制御されたチタニアを作製した。チタニアの細孔サイズ・容積・比表面積は、加える有機カルボン酸の量とアルキル鎖長に依存して変化し、界面活性剤としての性質を有する長鎖カルボン酸が大細孔形成に有効であることがわかった。現在引き続き細孔形成過程の解明、薄膜化の条件探索の研究を進めている。 2.ケイ素アルコキシドに有機物を共存させたときの複合体の形成過程、有機物が焼成後のシリカ多孔体の細孔構造に与える影響について検討した。特に、エチレングリコールおよびそのオリゴマー共存系で作製したミクロ孔シリカにおける細孔形成機構を、詳細な固体NMR・熱分析測定結果に基づいて提案した。現在は様々な有機物がシリカ多孔体形成過程に与える影響について調査している。 3.多孔体内液相中の溶質の拡散現象を評価する為に、拡散係数の測定方法を新規に考案した。この方法は、有色溶質についてフローセル中の試料の吸光度の経時変化の測定データより容易にその拡散係数を算出できる。すなわち安価な装置で簡便かつ高精度で拡散係数の測定が可能であるという優れた特徴がある。本法を細孔サイズの異なる多孔体中での様々な溶質の拡散係数測定に利用して拡散係数をえることで、多孔体の新機能性付与における調製条件の最適化、様々な実用材料への応用などにおける必須の基礎データを得ることが可能となる。
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