本年度は以下のテーマについて研究を進め成果を上げた。 1.有機カルボン酸とチタンアルコキシドの複合体を作製し、その熱処理により細孔構造の制御されたチタニアを作製した。チタニアの細孔サイズ・容積・比表面積は、加える有機カルボン酸の量とアルキル鎖長に依存して変化し、界面活性剤としての性質を有する長鎖カルボン酸が大細孔形成に有効であることがわかった。この複合体を利用したチタニア多孔質薄膜の作製に成功した。この薄膜の構造と性質については引き続き研究を進めているが、粉末焼成品では5-20nmの広いサイズ範囲にわたって比表面積を損なうことなく細孔サイズ制御ができており、新しい多孔質チタニア薄膜の調製法として今後の応用が期待できる。また、有機カルボン酸と金属アルコキシドおよび金属塩の組み合わせによる錯体形成能、複合体のメゾ構造、細孔形成への効果について系統的に研究を進め、ジルコニア、酸化スズ、マグネシア系について多孔体の作成とその細孔制御を行った。 2.ケイ素アルコキシドにヒドロキシ酸を共存させたときの複合体の形成過程、有機物が焼成後のシリカ多孔体の細孔構造に与える影響について検討した。この系においては、強い有機無機相互作用は存在せず、アモルファス状態のクエン酸が乾燥時のシリカゲルの収縮を抑制し、焼成過程でクエン酸が除去されるときにそのまま細孔が形成されることが推測された。気孔率の高いシリカゲルが容易に得られることから超臨界乾燥を経由しない簡便なエアロゲル作製法として展開が期待できる。
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