研究概要 |
11年度は「超音波噴霧MOCVD」装置の試作ならびに成膜条件の検討を行った。 [装置の試作と溶媒の選択] 成膜室の圧力は購入したバラトロン真空計を用いて測定した。今回試作した装置では大気圧(760torr)で発生させたミストを低真空(1torr程度)の成膜室へ供給する必要があったが,2つの圧力を隔てるオリフィスとして加熱した微量制御用のニードルバルブが使用できることを明らかにした。薄膜の原料の有機金属は有機溶媒に溶解した状態でミストとなっているが,このミストを効率よく気化させるための気化器として超音波噴霧器を用いた。次にMOCVD原料と相性がよい有機溶媒の選択を行った。この場合,有機溶媒に求められる条件として(A)有機金属原料を十分溶解すること,(B)置換基交換反応が活性でないことの2点が重要で,この条件を基礎にヘプタン,THF,酢酸ブチルを選択した。本研究ではチタン酸鉛(PbTiO3)をストイキオメトリー組成薄膜のモデル材料に選択した。Pb(DPM)_2とTi(i-OPr)_4を原料として選択した。 [薄膜の合成と電気特性] 従来の薄膜の研究の問題点の一つは,X線回折による単相領域と組成分析結果とのずれが生じることで、多くは非晶質相の存在が考えられている。本研究で提案する成膜法の利点の一つとして組成の制御性の高さが期待される。このことを確認するために溶液中のPb/Ti比と薄膜中のPb/Ti比を比べた。分析には現有のICP発行分光分析法を用いた。その結果,薄膜の組成は溶液組成とは必ずしも一致しないものの,繰り返しの成膜に対してPb/Tiの組成は安定していることが明らかとなった。平成11年度ではストイキオメトリーの厳密な制御へのステップとして,合成したほぼ定比組成の薄膜が耐リーク特性が高く強誘電体に特徴的なヒステリシスを示すことが明らかになった。
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