これまで困難と考えられてきたガラス転移温度以下におけるガラスの微小変形を測定する方法としてファイバーベンディング法を提案し、その変形機構および粘度の解析を行ってきた。しかしながら、その変形および緩和挙動におよぼすガラス中の水分量の影響について依然不明瞭な点が多い。そこで、水分を含まない光学シリカガラスファイバーおよび水分を多く含む溶融法によって作製されたシリカガラスファイバーを用いてガラス転移温度以下における粘弾性的性質の解析を行った。さらに、乾燥および湿潤雰囲気下で測定を行い、ガラス中への水分の混入と粘弾性的性質の解析を行った。 光学シリカガラスファイバーと溶融シリカガラスファイバーを比較した場合、ガラス転移温度以下で温度が低下するほど溶融シリカガラスファイバーの粘度が低下することがわかった。このことから、熱振動によるガラス中の非架橋酸素の増加と水分によって生じた非架橋酸素の数量の割合によって粘度が大きく影響されることが示唆された。また、このことが同様に粘弾性的性質に大きく影響し、特に遅延弾性成分の差となって現れることがわかった。さらに、雰囲気の水分量を変化させた場合では水分量の増加とともに粘度が低下し、その活性化エネルギーは水の拡散の活性化エネルギーに近づくことがわかった。このことからも、水の拡散によって生ずる非架橋酸素の存在が粘度に大きく影響することが示唆された。
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