酸化チタンなどの酸化物半導体は環境浄化作用を持つ光触媒として注目を集めている。分子選択性などの新たな機能を付加した光触媒を作製するために、半導体ではなくゼオライトの光触媒としての利用を検討した。ゼオライトは規則的な分子サイズの細孔をもつ結晶性ケイ酸塩化合物であり、その分子篩特性を利用した分子認識性光触媒への応用が期待できる。しかしゼオライトは可視・紫外領域の光を吸収しないため、それだけでは光触媒へ応用できない。そこでこれまで、骨格中のケイ素の一部をチタンに置換したゼオライトの合成について検討してきた。その結果、溶液中のチタン種を有機配位子により化学修飾することにより、チタンが効率よくゼオライト骨格に固溶した。今回は、合成したチタンゼオライトの光触媒特性について検討した。アルカノールアミンの分解反応により光触媒特性を評価した。チタンゼオライトは本来、遠紫外線しか吸収しないが、アルカノールアミン水溶液と混合することにより、チタンにアルカノールアミンが配位し、約300nmの近紫外線を吸収するようになった。そこで、チタンゼオライトを懸濁したモノエタノールアミン水溶液に約300nmの光を照射したところ、モノエタノールアミンが光触媒反応により分解されることが分かった。チタン1原子あたりの分解効率は酸化チタンより優れていた。また細孔よりサイズの大きいトリエタノールアミンでは同様の光分解ができなかったことから、ゼオライトが分子選択性を有する光触媒として応用可能であることが分かった。また、その光触媒特性を有効に利用するには、ゼオライトを配向膜として利用することが望ましい。そこで、ゼオライト配向膜の作製についても検討した。ゼオライト結晶の支持体への配向コーティングとその二次成長により配向膜が作製できた。特に有機配位子で原料成分を化学修飾することにより、結晶粒子の二次成長を促進することが有効であった。
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