無機/有機機能界面の自己組織的創生と光エネルギー変換への応用

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11750588
• 研究機関: 岐阜大学
• 研究代表者: 吉田 司 岐阜大学, 工学部, 助手 (90273127)
• キーワード: 半導体 / 色素 / 無機 / 有機複合材料 / 自己組織化 / 薄膜 / 電気化学析出 / 色素増感型太陽電池 / 機能界面

研究概要

溶液からの化合物薄膜の電析では、析出物と溶液界面での化学現象が薄膜構造や機能に著しく影響する。ここに直接影響を及ぼす化学種、例えば吸着性の有機分子を作用させれば、結晶構造を変化させたり、さらには無機/有機複合材料の形成が可能となる。この様な自発的化学過程によって形成された無機/有機構造は、両者を物理的に接触させた場合と異なり、界面からの機能を最大限発揮できる理想的材料となることが期待される。
硝酸亜鉛水溶液からのZnO薄膜のカソード電析において、浴中に水溶性のフタロシアニンテトラスルホン酸金属錯体(TSPcM、M=Zn(II)、AL(III)[OH]、Si(IV)[OH]_2)やテトラブロモフェノールブルー(TB)などの有機色素を添加すると、これらの色素で表面修飾されたZnO薄膜が得られた。色素吸着は結晶成長を抑制するため、TSPcZnやTBでは微小なZnO粒子で構成されたポーラス構造が自発的に形成された。また、吸着安定度の結晶面依存性は特異的な結晶成長を促す。TSPcSiはZnOの(002)面に優先吸着するため、側面が(100)面、盤面が(002)面となるディスク状結晶の集合体が側面を露出して配向した特異的形態の薄膜を形成した。また、色素の結晶表面への吸着と色素分子間の化学相互作用により規則構造を有した色素集合体がZnO表面に形成し、例えばTSPcZnやTBでは色素発色団が平行に配列したいわゆるH-aggregate様の集合体となるのに対し、TSPcAlやTSPcSiでは軸配位子によって凝集が抑制され、モノマー状に吸着する。
得られた色素修飾ZnO薄膜は可視光照射により光アノードとして機能し、膜中に導入された色素による増感作用が確認された。色素集合体構造と増感機能には密接な関係が有り、TSPcM集合体は分子間相互作用により失活し、モノマーのみが優れた機能を示すのに対し、TBでは集合体が優れた増感作用を持つ事が分かった。

研究成果

• [文献書誌] T.Yoshida,et al.: "Self-Assembly of Zinc Oxide Thin Films Modified with Tetrasulfonated Metallophthalocyanines by One-Step Electrodeposition"Chemistry of Materials. 11・10. 2657-2667 (1999)
• [文献書誌] T.Yoshida,et al.: "Self-Assembly of ZnO/Tetrabronophenol Blue Mixed Thin Film by One-Step Electrodeposition and its Sensitized Photoelectrochemical Performance"Transactions of the Materials Research Society of Japan. 24. 497-500 (1999)
• [文献書誌] K.Yamaguchi,et al.: "Synthesis of Q-Particulate CdS Thin Films by Using Surface Adsorbent in Electrochemically Induced Chemical Deposition(EICD) Technique"Electrochemistry. 67・12. 1168-1171 (1999)
• [文献書誌] D.Schlettwein,et al.: "Photoelectrochemical Sensitisation of ZnO-Tetrasulfophthalocyaninatozinc Composites Prepared by Electrochemical Self-Assembly"Journal of Electroanalytical Chemistry. 481. 42-51 (2000)
• [文献書誌] R.Wahlster-Yoshida,et al.: "Electrochromic Redox Reactions of Vapour-deposited Thin Films of Tetrapyridotetraazaporphyrinatozinc(II)"Journal of Porphyrins and Phthalocyanines. 4. 112-122 (2000)