研究概要 |
人工材料を生体組織に埋入すると、生体はこれを異物と認識して線維性被膜で覆い周囲の組織から隔離しようとする。ところがセラミックスの中には、体液と反応してその表面に骨類似のアパタイト層を形成することにより、線維性被膜の介在なしに短期間で生きている骨組織と結合するものがある。しかしそれら生体活性なセラミックスは大腿骨などの大きな荷重の架かる部位や柔軟な組織を置換するには、十分な機械的特性を有していない。本研究では、無機-有機ナノ複合体を用いて生体活性と種々の力学的機能を併せ示す新規生体材料を設計する基礎的指針の確立を目指す。即ち医用高分子として用いられている親水性のポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)と3-メタクリロキシプロピルメトキシシラン(MPMS,CH_2=C(CH_3)COO(CH_2)_3Si(OCH_3)_3)を用いて無機-有機ナノ複合体を合成し、その微構造とアパタイト形成能の関係を調べ、無機-有機ナノ複合体の生体活性を制御する因子を明らかにする。試料の生体活性については、擬似体液による生体外(in vitro)実験により評価する。 本年度は主として、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とMPMSのモノマーを出発原料に用いて無機-有機ナノ複合体を合成する条件を探索した。その結果、溶媒をエタノールとし、重合開始剤に過酸化ベンゾイルを用いて80℃で3時間の保持により、ブレンドポリマーが得られた。これに塩化カルシウムのエタノール溶液を加えても均一な無機-有機ナノ複合体の溶液となる条件が明らかになった。この無機-有機ナノ複合体のエタノール溶液は、ガラスやアクリル基板上にもコーティング可能であった。
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