機械部品、各種ガスの高温炉材として応用されている窒化珪素では、その原料粉末の結晶相とアモルファス相の割合が焼結性、焼結体の機械的特性、および熱物性を決める1つの重要な鍵になると考えられる。そのため、結晶相やアモルファス相の定量を行うことは大変重要である。しかしながら、アモルファスの定量分析法に関する研究は十分になされておらず、実用上深刻な問題となっている。セラミックス材料科学の分野で一般的に用いられているX線回折だけでは、アモルファスのような長距離秩序が保たれていない系の研究を行うことは非常に困難である。そこで、短距離的な周期構造に敏感なNMRを用いて、アモルファス窒化珪素の精密な定量法を確立した。今年度に実施した内容は、精密分析に充分耐えられる高純度な標準窒化珪素試料のイミド法による合成、スピン-格子緩和時間(T_1)の正確な測定である。これらの成果は、セラッミックスの世界的な一流誌である「Jornal of the American Ceramic Society」で印刷予定である。本研究のNMR法によりアモルファス窒化珪素の精密な定量法が確立されるならば、窒化珪素の原料粉末中のアモルファスの量と粉体の焼結性、焼結体の機械的特性との関係が明らかになり、その結果、従来と比較して高品質な窒化珪素焼結体を合成できることが期待できる。今後、本測定法を特定の物質に限らず様々な高機能セラミックスにも拡張し、アモルファスと物性との相関が明らかにされるならば、セラミックスに関する基礎科学のみならず応用研究にも大きく貢献することはまちがいないであろう。
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